導入
「初めて受けた全県模試の結果が返ってきたのですが、志望校が『D判定』でした。志望校を見直すべきでしょうか?」 このようなご相談を 広島の高校受験 を控える保護者様から数多くいただきます。
結論から申し上げますと、早い時期の模試の D判定 や結果だけで志望校の変更を検討する必要はありません。これまで学校の定期テストに向けた学習を中心に進めてきた生徒が、広島県公立高校入試の出題形式を模した試験で、最初から高い得点を記録することは容易ではないからです。
今回は、現場での指導経験と広島県公立高校入試のデータに基づき、定期テストで一定の得点を取れる生徒が模試で得点を伸ばしきれない理由と、偏差値や判定のアルファベット以上に確認すべき「成績表の客観的な見方」と効果的な模試対策を解説します。
定期テストと入試(模試)の根本的な構造の違い
中学生の多くは、学習の到達度を測る指標として「学校の定期テスト」を基準としています。定期テストは基本的に「すでに授業で習った範囲(既習内容)」の知識や理解度を問う試験です。出題される語句や問題のパターンも、学校のワークやプリントに準拠していることが多く、学習した内容を正確に記憶し、再現できれば高得点に結びつきます。
一方で、広島県の公立高校入試、およびそれを模した全県模試は、構造が全く異なります。 英語の長文読解、理科の初見の実験資料、社会の複数のグラフや地図を組み合わせた記述問題など、「初めて見る情報や課題に対し、自分が持っている基礎知識をどのように適用して解決するか」という情報処理能力と論理的思考力が問われます。
2025年度(令和7年度)の広島県公立高校入試のデータを見ると、5教科合計の平均点は250点満点中113.0点(1教科あたり約22.6点)にまで低下しています。この数値が示す通り、現在の広島県の入試は、教科書の太字を暗記しているだけでは半分の得点にも届かない内容に変化しています。
たとえば、国語の試験では2024年度の合計270字から、2025年度には355字へと記述量が大幅に増加しています。説明文の論理構成を素早く把握し、指定された条件(特定の語句を使う、段落の役割を踏まえるなど)を守りながら、決められた字数内で文章をまとめる能力が求められます。数学においても、単純な計算問題だけでなく、日常の事象を数理的に捉える問題や、会話文形式の問題が増加しており、問題文から必要な情報を抽出する力が不可欠です。
リビングのテーブルで模試の問題用紙を開いてみると、長い会話文や複数の資料を前に、お子様がどこから手をつけてよいか分からず、鉛筆が止まってしまった形跡が見受けられることがあります。「読解の戦略」や「資料処理の型」を持たないまま、定期テストの暗記という手法だけで模試に挑むのは、出題形式への準備が不足している状態と言えます。その準備不足の状態での「D判定」をもって、ご自身の適性や学力の限界を決めてしまうのは、適切な判断とは言えません。出題形式が明確である以上、その形式に対するアプローチの仕方を身につけることが次のステップとなります。
偏差値よりデータを見る。成績表の「3つのチェックポイント」
では、返却された模試の成績表から、具体的にどのようなデータを読み取り、学習に反映させればよいのでしょうか。全体の偏差値やAからEまでの判定ではなく、以下の3点に注目して「どこで失点しているか、どのように改善できるか」を客観的に分析してください。
1. 「大問ごとの正答率」と自身の得点の差異 全県模試の成績表には、県全体の受験生の「設問ごとの正答率」が記載されています。ここで確認すべきは、「県全体の正答率が50%以上と比較的高いにもかかわらず、お子様が落としている問題」です。
ご家庭での丸つけの際、「どうしてこんな基本的な問題を間違えたのだろう」と指摘したくなる場面があるかもしれません。具体的には、数学の大問1で出題される基礎的な計算問題や、英語の基本的な語彙、理科・社会の一問一答形式の知識問題などです。 広島県の公立入試では、数学の大問1などで基礎的な計算問題が確実に出題されます。こうした「受験生の多くが正解できる基礎問題」でのケアレスミスや知識の抜けをなくすだけで、得点は安定し、全体の偏差値も数ポイント上昇します。 反対に、県全体の正答率が10%を下回るような難度の高い問題については、現段階で解けなかったとしても深く気にする必要はありません。まずは基礎問題の正答率を100%に近づけることが最優先事項です。
2. 「時間配分」の適切さと情報処理の形跡 模試の問題用紙と解答用紙を照らし合わせた際、最後の大問が手つかずで白紙になっている場合があります。これは、単なる学力不足ではなく「時間配分」が適切に行われていないことが主な要因です。
広島県の入試問題は、問題文の分量が多く、必要な情報を素早く処理する力が求められます。たとえば理科では、探究型の問題が主流となっており、長い対話文や複雑な実験データが提示されます。すべての実験手順を最初から最後まで丁寧に読み込もうとすると、時間が不足します。「まず設問を読み、一般知識だけで解ける問題なのか、実験データや表を参照しなければ解けない問題なのかを仕分ける」といった戦略が必要です。 思考力や知識を備えていても、限られた時間内でそれを出力できなければ得点には反映されません。模試は、この時間配分の練習を行う場として活用し、次回はどの問題にどれだけの時間をかけるべきか、あるいはどの問題を後回しにするかを振り返ることが重要です。
3. 志望校内順位と「単元別の到達度」の確認 全体の偏差値だけでなく、「第一志望としている集団の中で、自身がどの位置にいるか」という志望校内順位を確認してください。志望校ごとに求められる得点ラインは異なります。
また、模試を受験する前に「今回の模試では、これまで学習した数学の関数分野だけは確実に正解する」「英語の長文読解で、指示語の内容を正確に捉える」といった具体的な小目標を設定しておくことが有効です。全体としての判定が希望するものでなかったとしても、事前に設定した単元別の目標が達成できていれば、その学習アプローチは適切に機能していると評価できます。
現場の視点:過去問の出題例から見る「落としてはいけない問題」
模試の成績を改善するためには、広島県公立入試の具体的な出題傾向と採点基準を知り、それに基づいた対策を行うことが求められます。特に差がつきやすいのが、理科や社会における「記述問題」です。
広島県教育委員会が発表した令和6年度の「一般学力検査の結果の概要」では、受験生の課題として「文章・資料等から読み取るなどして得た情報を、既習の知識や学習内容等と関連付けて考察して、自分の考えをもったり判断したりし、その過程や結果を表現することが十分にできていない点」が挙げられています。つまり、用語の意味は理解していても、それを関連付けて過不足なく文章にする力が不足している傾向があります。
実際の過去問を見てみましょう。令和2年度の理科(物理分野)では、「木片の移動距離が小さくなった理由」について、「小球がもつエネルギー」と「摩擦力」という2つの語句を関連付けて説明することが求められました。 ご家庭で模試の復習をしているとき、お子様が「小球のエネルギーが減ったから」とだけ解答欄に書き込んでいるのを見つけるかもしれません。日常的な表現としては意味が通じますが、入試の採点基準では、指定された条件を満たしていないため減点、あるいは無得点となります。 ここで求められるのは、指定された語句を正確に組み込み、「摩擦力によって、小球がもつ力学的エネルギーの一部が失われたから」と、条件を過不足なく論理的な一文として構成する力です。
また、令和3年度の理科(生物分野)における、子葉と茎の成長に関する対照実験を計画させる問題では、「比較したい条件(子葉の有無)『以外』は、すべて同じ条件にする」という科学的な前提を、自らの言葉で記述できるかが問われました。
こうした記述問題において、「何と何を関連付けるか」「主語は何か」「どのような理由でそうなったか」を明確にして書く訓練は、模試や過去問演習を通じて継続的に行う必要があります。
家庭で実践できるアクションプラン:過去問を通じた形式への最適化
模試の価値を最大化し、着実に得点力を高めていくために、ご家庭で実践していただきたいアクションプランを提案します。それは、「模試の前に、早い段階で広島県の入試過去問の出題形式を確認しておくこと」です。
最初から時間を計って過去問の全科目を解く必要はありません。「数学の大問1だけ解いてみる」「理科の記述問題の条件指定のされ方を確認する」「国語の長文の文字数を見る」といったように、分野を絞って出題形式に触れてください。これにより、「入試本番では、日々の問題集で学んだ知識がどのような形で問われるのか」という具体的なイメージを持つことができます。
その上で、日々の学習で基礎知識を固め、模試を「過去問で把握した形式に対する実戦練習の場」として位置づけます。「形式を知る」→「日々の学習で知識を定着させる」→「模試で時間配分と知識の出力精度を試す」→「成績表のデータから弱点を分析し、次の学習計画に反映させる」。このサイクルを回すことが、本番の得点力を高める最も確実な手法となります。
まとめ
模試は、現在の学力的な価値を決定するものではなく、本番に向けて修正すべき課題を客観的なデータとして示してくれる指標です。判定のアルファベットに一喜一憂するのではなく、成績表に記載された正答率や時間配分の形跡を冷静に分析し、具体的な改善策を立てて実行していくことが求められます。
広島県公立高校入試の出題形式に対する最適化を進め、基礎の定着と論理的な表現力を磨いていけば、学習の成果は必ず成績に表れてきます。模試の結果を正しく活用し、着実な学力向上へと繋げていきましょう。